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ロイス・ローリーのSF小説「ギヴァー 記憶を注ぐ者」は、全世界で1,000万部も売り上げたベストセラーで、アメリカの中学校の指定図書にもなっている。 この良書の映画化に10年以上も費やした共同制作会社ウォールデン・メディアの最高執行責任者フランク・スミスは語る。「原作は児童文学の白眉だ。これまでにも我々は『テラビシアにかける橋』『ナルニア国物語』シリーズなど、数々の優れた書籍の映画化に取り組んできたが、本作をプロデュース作品リストに加えられて、とても誇りに思うよ」 そして「ギヴァー 記憶を注ぐ者」の映画化は、本作の出演俳優で、プロデューサーの一人でもある名優ジェフ・ブリッジスの20年越しの夢の実現でもあった。「父親のロイド・ブリッジスを監督できる作品を探していたんだ。それと同時に、自分の子供たちがいつでも見られるような映画を作りたいとも願っていた。で、児童書のカタログを見ていたら一冊の素晴らしい装丁の本に巡り会った。それには白髪まじりの老人が描かれていて、父さんを出演させるのにピッタリの企画だと思った。この本は大人向けとしても十分いけるからね」と、ブリッジスは思い返す。当時、自分のビデオカメラを使って監督するつもりだったブリッジスは、ギヴァー役に父親を、そして甥っ子をジョナス役に起用し、撮影する寸前までいったという。
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ジェフ・ブリッジスは「20年に渡って僕は、原作に忠実でありたいと思い続けていた。だけど、映画ビジネスの素晴らしい点はクリエイティブな人々が集結し、彼らと一緒に仕事ができるということ。それを活かしきるには、しがみついていたものを捨てなきゃならない。

我々は幸運なことにマイケル・ミトニックを脚本家として迎えられた。彼は素晴らしいアイディアの持ち主で、みんなの考えに対してオープンだった。彼は僕たちの案に、ちょっとしたヒネリを加えてくれた。その結果、それは元の案よりも数段良くなっていた」と明かす。

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このユニークなディストピア映画の陣頭指揮を取ったのは『パトリオット・ゲーム』『今そこにある危機』『ボーン・コレクター』『ソルト』の名匠フィリップ・ノイス監督だ。

製作者のニッキ・シルヴァーは監督について、「彼の守備範囲はとても広い。スケールの大きいアクション大作を手掛ける一方で、『愛の落日』や『裸足の1500マイル』といった人間味あふれる個性的な珠玉作も監督できる。

その振り幅の広い彼こそ、我々が探し求める“舵取り役”にふさわしかった」と語り、ジェフ・ブリッジスも「映画製作の99%の比重を占めるのは“キャスティング”であり、それには監督の人選も含まれている。僕たちはフィリップをリーダーにできて、本当に運が良かったよ」と言い添える。

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アレクサンダー・スカルスガルドが演じたのはジョナスとリリーの父親で、彼はコミュニティーにおいて養育係の仕事に就いている。新生児が誕生してからの数ヶ月間、乳児の“心身”に必要なものを管理する責任者だ。彼はまた、価値がないと見なされた乳児を解放(殺生)する責任をも負っている。 原作は未読だったスカルスガルドだが、若い頃は「1984年」「すばらしき新世界」といったディストピア小説やSFの大ファンだったと打ち明ける。「この映画の脚本もそんな世界が描かれており、とても興味深かった。一見すると、この社会は完璧だ。痛みや苦悩は一切なく、批判的思考すらない。我々は自分たちの社会で何を問題にすべきかを少なくとも判っているが、この父親は“愛”という概念も“死”という概念も知らないんだよ」

ケイティ・ホームズが演じたのはジョナスとリリーの母親だ。彼女は司法省で重要な地位に就き、コミュニティーの規則を絶対視している。ケイティいわく「私の演じる役柄の二面性をどう演じ分けるかに神経を集中させたわ。彼女は仕事柄、強さを求められるけれど、ジョナスの母親でいる時は控え目で傷つきやすいの。ジョナスの“体験”は母親の理解とコントロールできる領域から、完全に外れているからよ」

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本作の重層的なテーマの中で、最も重要なポイントは“記憶”である。知恵の源であると同時に、苦しみの源にもなる。ローリーが小説の中で造り上げたコミュニティーでは、個人の自由や選択を排除する厳格なルールが敷かれている。異質な個性や諍いを排除することにより、人間性の奥深さと感情が失われた世界が築かれているのだ。

ブレントン・スウェイツは「これは昔からある古典的な成長物語なんだよ。で、僕がこの映画の中で好きなテーマは“愛”。つまり、愛のために闘うことが人間にとって最も強くなれる方法の一つなんだ」と述べ、ジョナスの親友アッシャーを演じたキャメロン・モナハンは、「この物語で好ましい点は、本物の悪者がいないこと。人の権利を剥奪するルールも、邪悪な意図からではなく、逆に善かれと思っての決定なんだ。このコミュニティーは、純粋に正しいことをしていると信じ込んでいる。それは“現実世界”とすごく良く似ていると思うよ」と指摘する。

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10週間に渡る撮影は、南アフリカ・ケープタウンとその周辺でのロケ撮影およびスタジオ・セットで行われた。ユニークなセットを制作したのは『コンタクト』『ミッション・トゥ・マーズ』『ジュラシック・パーク3』などを手掛けた美術監督のエド・ヴェローだ。「暗示された部分が多い小説は、読者が想像力を駆使して自在に思い描けるから素晴らしいんだが、それを映像化するのは大いなる挑戦だった」と語るヴェローは、SF映画の『ガタカ』を参考にし、現実世界から遥かに離れた世界を造り上げたという。

撮影監督のロス・エメリーは、『マトリックス』『スーパーマンリターンズ』『アンナと王様』で撮影を担当してきたが、本作について「観客には単にジョナスの旅を観察するだけではなく、彼の感情にまで入り込んで夢中になってもらいたかったから、カメラワークやレンズの選択、照明のあて方にいたるまで気を配ったよ」と述べ、さらには「コミュニティーは精巧に造り上げられている。彼らの世界は万事平穏で穏やかだが、“色彩”がない。それをモノクロ映像ではなく、色の不在世界として視覚化した。色彩にはこの物語の“感覚”を強める効果がある。ジョナスが“記憶”を経験し始めると、物語にも色彩があふれ出してくる。赤色は彼の情熱の目覚めを表わしているんだ」と続けた。

ダイアナ・シリアーズが手掛けた衣装デザインでも、色彩が重要な役割を果たした。 「現実にはない世界だけれど、単に未来的なモノにはしたくなかった」という彼女は、「まず、登場人物の性格が判るようにカラーブロックを作ったの。穏やかな性質の人には、不快感やうるさく感じたりしない心地よい色が必要だったからよ。だから最初は殆どをパステルカラーにしておき、物語がギヤチェンジして記憶が現れ出したら、原色を差し込むようにしたわ」と解説した。

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