INTRODUCTION

近未来を描いた映画は多い。その中で「ギヴァー 記憶を注ぐ者」はディストピア寓話と呼ばれるジャンルに入る。ディストピアとは、ユートピアの反対を指す。ディストピア小説の代表的小説には、ジョージ・オーウェルの「1984年」、レイ・ブラッドベリの「華氏451度」などがある。原作の「ギヴァー 記憶を注ぐ者」は児童文学者ロイス・ローリーが書いた人気小説で、1994年にニューベリー賞を受賞した。世界中で1000万部も売れてベストセラーとなっている。ロイス・ローリーは1937年生まれ。ハワイ出身のアメリカ女性で、少女時代を東京で過ごしたこともあった。

映画『ギヴァー 記憶を注ぐ者』では、ジョナス(ブレントン・スウェイツ)が中心的な役割を果たしている。この少年は、理想的に見えるコミュニティーと呼ばれる社会に住んでいる。犯罪も戦争も貧困もない。住民は指定された場所に住み、感情を露わにすることもない。指定された職業に就き、欲を抱くこともない。調和がとれて安心できる社会だった。

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INTRODUCTION

だが、規制は厳しく、自由がない。ジョナスは職業任命の儀式でコミュニティーの主席長老(メリル・ストリープ)にレシーヴァー(記憶を受け継ぐ者)という大役に指名される。彼は、ギヴァー(記憶を伝える者=ジェフ・ブリッジス)という、すべてのコミュニティーの記憶を保持する唯一の人物と過ごし始める。すると、コミュニティーに隠された過去の、暗く最悪な真実をすぐに見つける。知識によって新しい力を得たジョナスは、この管理社会の中で自分がなさなければならないことを自覚する。極限の状況で、ジョナスは、愛する者たちを守るためにこの世界から逃亡することを決意する。その試みは、これまで誰も成功したことがなかった。

この映画は、出演俳優の顔ぶれが最高だ。メリル・ストリープはアメリカを代表する大スターで、「クレイマー、クレイマー」(79年)でアカデミー賞助演女優賞、「ソフィーの選択」(82年)と「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」(11年)で2度アカデミー賞主演女優賞を受賞している。ジェフ・ブリッジスは「ラスト・ショー」(71年)などで2度アカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、「クレイジー・ハート」(09年)の老いたカントリー歌手役でアカデミー賞主演男優賞を仕留めた。本作ではプロデューサーとしても参加している。

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主演のジョナス役ブレンドン・スウェイツはオーストラリア出身のイケメン若手俳優で、「マニフィセント」(14年)でフィリップ王子に抜擢された。ジョナスの恋人役フィオナを演じたのは、イスラエル出身の若手女優オデヤ・ラッシュで“第2のナタリー・ポートマン”の評判が高い。

ジョナスの父親役を演じたアレクサンダー・スカルスガルドはスウェーデン出身の人気俳優で、「メランコリア」(11年)などにも出ていた。母親役のケイティ・ホームズはトム・クルーズと結婚していたことで有名。 さらにカントリーの大物歌手のテイラー・スウィフトがローズマリーという役で出ている。お見逃しなく。

フィリップ・ノリス監督はオーストラリア出身。アメリカ映画では、「今そこにある危機」(94年)「ボーン・コレクター」(99年)「ソルト」(10年)などのヒット作を連発している。「ボーン・コレクター」ではアンジェリーナ・ジョリーを主演に抜擢。「ソルト」でも彼女をアクション女優に変身させた。

『ギヴァー 記憶を注ぐ者』はジョナスの視線を通じてモノクロ映像とカラー映像を使い分けている。俯瞰の映像なども見事だ。撮影は南アフリカなどで行われ、砂漠から雪山へとつながる雄大でダイナミックな景色が楽しめる。
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